アシテジ南アフリカ観劇日記4 2017/05/21 「スラムでの観劇体験」

 今日は、一般のホール公演ではなくバスに乗って、vrygrondというスラムの地域に行きました。※写真
そこにある小学校の体育館が今日の劇場。日本の演劇鑑賞教室をイメージしてもらえると良いかも知れません。日曜日なので学校は休みですが、地域の子供達と大人達が沢山集まっています。連日芝居を観ていますが、児童演劇にもかかわらず客席には大人ばかり。それも演劇人ばかりなので「現地の子供達はどんな風に芝居を観ているんだろう?」と、ずっと気になっていたのです。(「AnimalFarm」だけは、高校生の団体鑑賞と一緒に観劇する機会に恵まれましたが)
そこに「スラムでのポータブル上演がある」と聞いて、この日取っていたホール公演のチケットは、ごめんなさいして急遽こちらに参加しました。ともしびの大野さんと、風の子の大澗さんも一緒です。情報をくれたのは、Campany間の大谷さん。こちらでは、チケットの取り方やその他もろもろ「前もって聞いてきた情報と違う」ことは日常茶飯事です。だから情報交換が大事。自分で色々動いて「直接」情報を入手しなければなりません。これも海外フェスの醍醐味。
さて、スラムの雰囲気は、アパルトヘイト時代の南アフリカを描いた映画「インビクタス」や「遠い夜明け」で描かれていたそのままでした。
拾ってきたトタンや廃材で組み立てられた平屋の連なり。壁はそのまま隣家の壁でもあるのですが、一個一戸の家に鉄条網が張り巡らされています。僕たちの入った学校も同じです。フェンスには鍵がかけられ、警備員が配置されています。※写真
現地の人たちの服装は洋服です。足下は革靴、ナイキ、アシックスのシューズ。子供達は裸足も沢山います。民族衣装を身につけている人は見かけませんでした。ということは、自分たち独自の市場経済を持っているわけではなく、南アフリカの市場経済の底辺に位置しているということでしょうか。車は、一人一人が所有しているわけではなく、ハイエースなどに乗り合いをして、出かけていきます。
僕たちは、朝9時から夜の7時まで滞在しました。その間、学校の体育館と、道路を挟んだ建物とその前の広場にいて、芝居を3本。ワークショップを1本。プレゼンテーションを1つ聞き、広場では現地の子供達の歌やダンスを観ました。でも、スラムの他の場所に入っていません。
本当は、英語の分からないプレゼンテーションを90分聞くよりは、ここの人たちの日常を自分の目で見たかったのですが、僕にはフェンスの外に出て、スラムの中を歩き回る勇気はありませんでした。
バラックを写した俯瞰の写真は、トイレの窓から撮ったものです。
バラックの前までは、歩いて行ったのですが、カメラを向ける事が出来ませんでした。そのくせ、向こうからこちらが見られていないトイレの窓から隠し撮りをしたわけです。

子供達は広場のアスレチックやブランコで遊び回っています。大澗さんがコマを取り出すと一斉に集まってきました。「もう一回もう一回!」大澗さんは、完全にコマの伝道師と化してました。※写真

さて、いよいよ観劇。
子供達は、ちゃんと並んで待っています。ワクワクしている様子は、日本の子供達と変わらないですね。
そして上演。どんな様子だったかというと・・・これが可愛い。
難しい話だったり、展開が遅くなるとやっぱりザワザワします。その都度年上のお兄さんやお姉さん達に「シッ!」と注意されたり。かと思うと、劇中の女の子がいただきますのお祈りをすると、みんな思わず「アーメン」と口を揃えてしまったり。それが歌と踊りが始まると俄然テンションが上がって一緒に歌い出し、舞台に参加します。子供より大人が先に参加するんですけどね。僕の前にいたおばさんは、一緒に歌うといいますか、別の旋律をかぶせていく強者。そういう人ばっかりです。音楽はこの人達のもの! って感じ。
そしてリアクションがいい。
最後に観た芝居「My Culure,My Strength,My Identity」は、コテコテの展開で主人公のお母さんが亡くなる場面があります。僕などは、「いやそれはないでしょ」と突っ込みを入れたくなるのですが、僕の前のおばさんは、「オオウ」と、ため息を漏らして泣いてます。それを観るとこっちも素直な気持ちになる。
僕の隣には、1歳くらいの赤ちゃんをだっこしたお母さんがいたのですが、この子が途中からぐずりだしました。お母さんは優しく「シー」と、赤ちゃんの頭にキスをして、僕の方を見て申し訳なさそうな顔をします。「いや、いいんですよ」と伝えたくて、笑顔を返すと、お母さんも笑ってくれました。この辺は同じだなあ、と思います。子ども劇場の例会の、とっても雰囲気のいい時の上演のようでした。
今日、ここの子供達は朝から晩まで3回芝居を観ました。ちょっと難しい芝居もありましたが、最後の作品の雰囲気はとてもよかったなあ。
ここに日本の演教作品を持ってきたら、みんなどんな顔して観てくれるでしょう?
言葉の少ないシンプルな冒険活劇なんていいと思うなあ。

今日観た芝居
〇「Spirit Songs(南アフリカ)」40分。英語&コサ語。14歳以上。
〇「Tips snd tricks for engagement of teens in theatre(イタリアのWS)
〇「Obisike:It Takes A Lion`s Heart(ドイツ&ナイジェリア)」65分。英語。10歳以上。
〇メキシコ&ジンバブエ&ナイジェリアのプレゼンテーション
〇「My Culure,My Strength,My Identity(ジンバブエ)」60分。英語。13歳以上。

 


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