アシテジ南アフリカ観劇日誌5 2017/05/22 「日本人最年少の参加者のお気に入りは?」

アシテジ南アフリカ大会には、関西のアマチュア人形劇団の方々が8歳のお孫さんを連れて来ています。
「何か面白いのあった?」と聞くと、「Rite of spring」という声。「え?」と、思いました。
「Rite of spring」(※写真)は、オランダと南アフリカの合作で、言葉をほとんど用いないダンスパフォーマンスです。ダンスといっても「1,2,3,4!」の振り付けで合わせるようなものではなく、自分の内なる声に従って自由に踊っているような即興性の強いもの。どちらかというと「ワカリヅライ」部類に入ると思います。(演劇を「ワカル・ワカラナイ」でくくるのは、ナンセンスですが、ダンサーが頭の上にパソコンを乗せて舞台の上をずっとぐるぐる回っているのは、やっぱり「ワカリヅライ」部類かと・・・)
僕自身はこのパフォーマンスがダメで、舞台を正視出来ませんでした。
客席は、プールのような形の舞台を外側から挟んで観る格好なのですが、演者は、随所で客席に目線を送り、話しかけ、時にはもたれかかったりしてきます。
演者と観客が間にフィクション(ストーリー)を挟まないで直接交渉するのが僕は苦手なので、最前列に座ってしまった僕は、ずっとうつむいてボクハ、ココニイマセンオーラを出して客いじりを回避するしかありませんでした。
8人のパフォーマーは全員女性で、途中血を思わせる赤い塗料を舞台に塗りたくって泣き出す表現は、女性の初潮を表現していたのかな? とにかく僕には、「分からない」を通り越して「不快」な舞台だったわけです。
それが、8歳の女の子の口から「面白かった作品」として迷う事なくあげられる。ショックでした。
僕は、風船を使ったスイスのパフォーマンス(※写真)や圧倒的な造形力を持ったメキシコの人形劇(※写真)が上げられるのではないかと勝手に予測していたのですが・・・
この子にとっては、「役者と目が合った」ことも、楽しかった体験の一つだったようです。同じ芝居を観て、僕とは全く逆の反応をしていたわけです。
これが日本のコンテンポラリー系のダンサーの意見とかだったりしたら、天邪鬼な僕は「え~ 本当に~?」と疑うでしょうが、この子の口から出てくると「そっかあ・・・」と、うなるしかありません。
子供が演劇をどうとらえているか。
また一つ先入観を壊されました。
これから甥っ子姪っ子と一緒に何か観る時には、自分が面白いと思ったものを選ぶより、自分が「分かんねえ!」ものを選んで、観劇後に感想会をした方が、お互い色々発見があるかも知れないなあ。
ちなみにこの女の子のご一行は、こちらでスリ被害に合ったようです。現金はそれほど入っていなかったようですが、カードを取られたので、日本に電話してカードを止めてもらい、警察を呼んで被害届けを出してと、大変だったようです。でも、これも見方を変えれば、この女の子にとっては、一生忘れられない宝物のような経験になるんじゃないかな。
事情は分かりませんが、お父さんお母さんと離れて、2週間学校を休んで南アフリカにおばあちゃんと一緒に芝居を観に行くなんて、ちょっとやそっとで出来る事ではありません。
「すげえ経験してるなあ。」心の中で拍手です。

今日観た作品
〇「White out(スコットランド)」50分。ノンバーバル。14歳以上。
〇「Patrice Balbina’s chance encounter with the end of the world(イタリア・カナダ・オーストラリア・イギリス・ドイツ・ポルトガル合作)」50分。英語(メイン言語)。10歳以上。
〇「Zick Zack Puff(スイス)」50分。ノンバーバル。5歳以上。

 


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