アシテジ南アフリカ観劇日誌6 2017/05/23 「映像を用いた舞台」

今日は、映像を用いた舞台作品について考えてみます。
近年舞台作品に映像を用いる事は日本でもよく見かけますが、このアシテジ世界大会ではどうか・・・
現在16本作品を観ていますが、その中で映像を用いていたのは3本でした。意外に少ない? 作品で言うと、
「It’s Dark Outside」(オーストラリア)
「White out」(スコットランド)
「Full Moon」(レバノン)
です。
※実は、この他に「Obisike:It TakesaLion’s Heart」(ドイツとナイジェリアの合作)という作品がOHP(!!)を用いていたのですが、実際に手で動かしながら影絵のように表現していたので数に含めていません。ここでいう「映像」とは、「コンピュータであらかじめ製作したものを機械的に投写したもの」と定義します。
一口に映像といっても「質感」と「使い方」で特徴が分かれます。
質感は、

○現実の写真や動画を使うもの・・・仮に「リアル系」と呼びましょう。
○象徴的な絵や模様を使うもの・・・仮に「シンボル系」と呼びましょう。の2種類があります。

使い方は、

○セットなどの背景を映像で映写する・・・「背景」
○アニメーションなど、映像だけで表現が完結している・・・「オンリー」
○人間と映像、人形と映像をからめていく・・・「ミックス」

があります。
「It’s Dark Outside」(オーストラリア)の質感は「シンボル系」です。使い方は、「背景・オンリー・ミックス」全部使ってました。ホームページからの写真をご覧下さい。※おじいさんの人形が「Z」の文字につかまって、空を飛んでいるもの。
この星空と雲が映像です。
この作品は、人間・人形・影絵・映像を駆使して、認知症の老人の日常を時に生々しく、時にファンタジックに描いた作品です。映像は、この「ファンタジック」な要素を担っています。舞台に映像を用いる事自体賛否両論分かれる所ですが、そうとう考え抜かれて使われています。※一番特徴的なのは、老人の徘徊する場面をシンボリックな映像オンリーで表現した後に、影絵と絡んで、また人間芝居に戻る所なのですが、観劇中に写真を撮る事は出来ないので、その写真はありません。

次は、「White out」(スコットランド)。これは、「リアル系」&「ミックス」です。
この作品は、ノンバーバルのダンスパフォーマンスです。人種を越えた絆・恋愛・家族がテーマ。
舞台上には、大きなパネルが2枚、間を空けて立っています。
この大きなパネルに、ダンサー達が踊っている動画を投影します。そして、それとまったく同じ踊りを舞台上のダンサーが踊って、パネルの後ろを通り抜けます。そうすると、現実と映像が交錯したようになるわけです。原理はすぐに分かるのですが、実際に見ると、ちょっと不思議な感覚に陥ります。
映像の方には、幼児が先頭を踊りながら駆け抜けている姿を入れているので、大人達が幼児の動きを真似ながら楽しそうに踊っている姿が浮かび上がるという仕掛け。これは、このダンスカンパニーが普段やっているワークショップの映像を投影しているものかも知れません。※写真。

最後は「Full Moon」(レバノン)。
これは「シンボル系」&「背景&ミックス」ですね。※写真。小さいですが、手前の人形の後に移っている背景と影が映像です。

映像自体が使われている作品はそれほど多くありませんが、使っている作品の映像のクオリティーは相当高い印象を受けました。面白いのは、映像をそのまま使うよりは、シンボリックに、そしてミックスして使っている事ですね。僕は、もともと映像の専門学校に行っていた事もあり、「舞台でしかできない事」を考えると、芝居で映像を使いたいとは思っていないので、この分野に疎かったのですが、自分が思っているよりずっと舞台で映像を使う事が洗練されている印象を受けました。

今日観た芝居
「young@home(南アフリカ&デンマーク)」40分&20分のディスカッション。14歳以上。ズール語、英語、ソト語、ヴェンダ語、ペディ語、ツワナ語。
「Full Moon(レバノン)」55分。6歳以上。英語。人形劇。
「Tiger Bay(南アフリカ&ウェールズ)」180分。7歳以上。英語。ミュージカル。

ニュース
○Campany間の大谷賢治郎さんがアシテジ世界大会2020年の東京招致で演説。洒落を効かせたプレゼンテーションで会場の笑いを誘っていました。
○太田昭さん、クラウンYAMAさん、渋沢やこさんたち後発組も無事合流。