脚本 石神 朋子
2022年11月15日
【登場人物】
御書ツエ 中1(鹿児島イントネーション)
柚音(ゆずね) 高2
葵(あおい) 高2
萌黄(もえぎ) 中2
おばあちゃん 73歳(鹿児島イントネーション)
ツエの母 40歳(鹿児島イントネーション)
パワーポイントで 昭和40年代の家先が映し出される。
効果音;昭和のラジオ番組が流れている。「ジャイアンツ長嶋茂雄の痛快のヒットにより、西鉄ライオンズを」など。
制服を着たツエ、スクールバッグを持って登場。縁側にいた母親が声をかける。
母 今日は日曜日じゃがね。ソエ子、どけいっとな。
ツエ ああお母さん。昨日言ったがね。招待クリスマス会よ。
母 あら、よかねえ。イギリスのカノッサ会の姉妹校の女学生の人たっがくるっちゆうとったけ?そん人達の招待や?
ツエ そん人達はまだじゃろ。今日はボランティア。祁答院に大村報徳学園っていう児童施設があるがね。そこの子どもたちを招待すんのよ。学園創立以来続いてるってよ。
母 ああ、あんたは最近一粒会っちゆうのにはいったんじゃったねえ。奉仕活動はよかことじゃ。
ツエ でも中一は一人しかはいっとらんで同級生がおらんからさみしか。だれか入部せんけえ。
母 ひとりでん、よかとよ。先輩がたの足を引っ張らんごと頑張れば。
ツエ そうだね。
母 じゃっどん時間な大丈夫や。
ツエ 何で
母 今日から12がっじゃっど。汽車のダイヤが変わるっち。調べてあっと?
ツエ あったりまえだのクラッカー。ほら、ここに時刻表が。
母 そんたあ、古いが。
ツエ あったり前田のクラッカーがな?最近はやりじゃが。
母 ちご。時刻表よ。昭和38年ち書いてあるが。
ツエ ん?1963年12月?はら、おととしのじゃ。
母 またなんごておととしのをとっちょっとな。
ツエ ここに、三浦友和がのっちょで。よかにせ!いや、こげなばあいじゃなか。とにかくいってくっで。いってきまあす!!にしてもこんな雪の日にないごてさむか恰好をして日光浴どんしちょっと。和文も幸子もかぜひっが。
母 鍛えられるでよかとよ。気を付けてなあ。そん靴は滑りやすかじ。
ツエ そうそう、カノッサ像前で雪の日にこけたらタイムスリップをするっち言い伝えが明光にあッとよ。
母 タイムスリップや。
ツエ 過去や未来の世界に迷いこむっちゅう。
母 はははは、そげなこっがあっはっがなか。
ツエ みんなゆうちょっど。
母 言い伝えっつはそげなもんじゃ。
ツエ ほんなこっよ。おとろしか。いってきまあす。
パワポ2 羽月駅。
効果音;ポーッ
ツエ はらあ、今出てしもた、次のは8時23分。ぎりぎりじゃ。まあ、次のに乗らんと。さむかさむか。
パワポ3 汽車
効果音;シュシュポッポッ
パワポ4 薩摩大口駅
効果音;シュー
ツエ うわあ、大口ん方が雪がよけい積もってる。よし、着いた。走って間に合うけえ。(引き返して)ええと、報徳学園のみんなは、祁答院からっちゅうことは、上り宮之城線9時34分着あたしが乗ったのの次のに乗ってくるんじゃろ。それともバスじゃろか。
パワポ5 陸橋を見下ろす。
ツエ はあ、はあ、諏訪神社ん坂はきつかあ。おっと、雪で滑るし。遅れたら、シスターアデレにがられるし。「あなたーわ、おそかったーですねえー」って。すごくいいシスターじゃっどん。はあ、はあ、
パワポ6 昔のマダレナ像。
ツエ もう少しだ。マダレナ像が見えてきた。つるっ、ああああー!
ツエ、こける。
パワポ7 タイムスリップの感じ。
効果音;タイムスリップの音。
パワポ8 2025年のマダレナ像前。
新しい型の制服を着た葵、萌黄、従来の制服を着た柚音が立っている。
萌黄 報徳学園クリスマス会って、学園創立以来ってことは、葵先輩と柚音先輩は高2だから5回目ですかあ。
葵 なわけないよ。萌黄ちゃん。ずっとコロナだったでしょ。去年、やっと収束したから去年からよ。
柚音 中学校の時は一回もなかったね。去年高1になって初めてよ。葵、寮生の一日里親も今年やっとあったね。お父さんが張り切ってたよ。
葵 そうそう、バーベキュー美味しかったあ。よろしく言ってて。6年間ないんじゃないかってあきらめてたらチョーラッキー。
萌黄 あ、5個上のお兄ちゃん、中学も高校も修学旅行、行けてないんですよ。ドンマイって。いい気味ですよ。
葵 ははは、萌黄はお兄ちゃんのこときら・・・
柚音 (萌黄に)そんなことをいうもんじゃないよ。
萌黄 ええ?
柚音 コロナで行けなかったのはお兄ちゃんのせいじゃないでしょ。
葵 まあまあ、柚音。
柚音 他の人もみんなかわいそうだよ。コロナのせいで何もかもだめになった人の気持ちは、分かんないだろうね。ちょっと体育館にみんな集まったか見てくる。
柚音、退場。
萌黄 ・・・・
葵 (柚音を冷めた目で見て)きつっ・・気にしなくていいよ。
柚音、うつむく。反省。
その時、ツエが起き上がる。
ツエ いったあ、制靴は滑りやすいからなあ。あいたたた。あ、まだみんな集合してる。よかった間に合った。あれ、わっぜおしゃれな制服。あ、そうだイギリスの姉妹校がもう来てるんだ。でも見た目は…どう見ても・・・。
葵 まじさあ、柚音、自分は全部正し、みたいなはいはいっておっつー
萌黄、柚音が帰っていたことに気がついて、
萌黄 あ、やばいっすよ。
葵 ぶっちゃけさあ。柚音、ときどき、ウザキャラっぽくね。
ツエ (首をかしげて)はあ~・・?これは英語だ。(うなずく)きっとこの方々は日系人だ。
柚音帰ってくる。白けた重苦しい空気が流れる。
ツエ やっぱりこの明光生にも通じてない。イギリスの姉妹校の人たちも一緒に参加することになっているんだ。お、おはようございます。
三人 ?
ツエ つうじない。そうだ、ハロー、ハウデュユデュー
三人 は?
ツエ あれ。
葵 え?
柚音 あの、一粒会の・・・方ですか?
ツエ はい、今度新しく一粒会に入りました、中一の御書ツエです。
葵 (こそこそと)中一なのになんで?前の制服着てるし。
萌黄 ですよねえ一個下にこんな子いたっけ。前の制服は高2と高3しかいないはずですよねえ。
葵 そう、柚音とあと高3の三つ編みの美人な先輩、だけよねえ。前の制服が気に入ってるから6年間着るっって。
柚音 そうだそうだこの制服、かわいいよねええ~。まあいいじゃん、おさがりをもらったんじゃないの。報徳学園の方も、前の制服の方がなじみがある方も多いと思って着て来たんじゃないの。
葵 はあ、いみふ、ありえる?
萌黄 まあじ、ありえ~ないっす。でもワンチャン、ゲットしたみたいな。
葵 それってなくね?
ツエ うう、何言ってるかわからん。これも英語?おーのーわからな~い。
葵 はあ?
柚音 あ、もう体育館に集まっているよ。開会のあいさつに行こう。早く行かないと。
萌黄 あ、はい。
ツエ あれ、報徳学園、もう着いてるんだ。いつの間に。
葵 ほら、御書さん?早く行くよ
ツエ あ、はい。(歩きながら)あのう、シスターアデレは・・・
萌黄 誰?
柚音 大牟田の修道院に引っ越した後、亡くなったよ。百四歳だったよ。
ツエ ん?ん?アデレってもう一人いるんだ。あれ、ここは?
パワポ9 明光体育館報徳学園の方が集まっている。
葵 ははは、体育館じゃん。もう12月なのにまだ覚えてないとかありえない。
ツエ 講堂じゃなくて。こんな大きな体育館があったんだ。知らなかった。体育はいつも講堂か外ですし。
三人顔を見合わせて首をかしげる。
柚音 報徳学園の皆さん、ようこそいらっしゃいました。初めに明光学園の校歌を披露します。お聞きください。
BG明光校歌に合わせて歌う。
ツエ おお、明光の校歌を日本語で歌えるんですね。どなたに習いましたか。
葵 え、え、松舟先生に決まってるじゃん。
ツエ へえ、松舟先生っていらっしゃるんですね。
葵・柚音 ・・・・、
柚音 では、初めにじゃんけんゲームをしたいと思います。ええと、葵、Aグループ。萌黄はBグループ、それから、御書さんだっけ、Cグループについてくれる?
葵 柚音、御書さんは外したら?
萌黄 ちょっと、先輩、この子ちょっとおかしいですよ。やばいですって。
柚音 大丈夫だってば。
葵 人の話聞けよ。も~、
柚音 (聞こえてるが)じゃあ、始めます。
ツエ、このやり取りを見ていたが、嬉しそうに笑って柚音にうなずいて走っていく。
柚音 明光生と、じゃんけんしまーす。
ツエ (すごく大きな声で)じゃんけんぽっくり下駄日和下駄!!
萌黄 はあ?
葵 いみふ!
子どもたちは大いに受ける笑い声の効果音?
ツエ え?もういっかいって?こんなのもあるよ。じゃんけんほっかほっか北海道。あいこでアメリカヨーロッパ!
子どもたちの笑い声。
ツエ え、お姉ちゃんおもしろいって?あったりまえだのクラッカー、じゃあみんなでやってみよ!!
葵 はあ?意味ふなこと言ってるけど、子ども喜んでるし。
萌黄 御書さん、子ども相手上手だね。
ツエ はい、弟や妹がいるんで。
萌黄 へえ、すごいな。お陰で盛り上がったし。あざーす。
ツエ あざーす?
柚音 これでじゃんけんゲームを終わります。では、次の班のゲームに移ります。
葵 私たちは調理の手伝いだね。
柚音 うん
萌黄 はい
しばらく歩いて
柚音 (こそっとツエに)御書さん、ツエちゃん、ありがとね、一番最初のゲームはみんな緊張して盛り上がらないんだけど、何かツエちゃんなら元気よく行けそうな気がしたの。大当たり。ありがとう。
ツエ いえ、先輩こそ、私にもさせてくださってありがとうございます。子ども大好きなんで楽しかったです。
柚音 じゃあ、来年も盛り上げ役、頼むよ。
ツエ 任せてください。
パワポ10 第2校舎調理室。
ツエ あれ、あれ、ここは?なんで調理室が急に新しくなって、あれ、講堂がここにあったんじゃあ?あれえ、なくなってる。ええ?これは・・・
萌黄 やっぱりおかしい。
葵 何かきもい。
柚音 ・・・いやきっと違う。ねえ、ツエちゃん。どこから来たの。
ツエ 羽月からです。羽月駅から汽車に乗って。
萌黄 羽月駅?汽車?
柚音 汽車に乗って、それから?
ツエ 薩摩大口駅で降りて、遅刻すると思って走ったんです。マダレナ像まで来たら雪で滑ってちょっとめまいが。
葵 えええええ、それって
柚音 ま、まさか
調理室の方で物を落とす音カランカランカランと、キャーがけたたましく聞こえる。
柚音以外みんな一斉に調理室に目を向ける。
柚音 ねえ、何年生まれ?
ツエ 昭和27年です。
ツエ以外が向き直る。ツエは調理が気になって仕方がない。
葵 ああああ。
萌黄 はあ?
葵 こ、これはやっぱり、御書さんってあれだよ。伝説の…伝説の…
柚音・萌黄 そう、あれだあ!!!!(パチン)
柚音 タイムスリップ!!!!(ツエもびっくりして一瞬振り返る)
萌黄 大口明子ちゃん!!!!
柚音・萌黄 はあ?
葵 明子ちゃんはないし。足もあるし、ちゃんと話しているし。
萌黄 タイムスリップこそないっす、あ、でもその伝説も明子ちゃんと同じくらい有名ですよねえ。雪の日にマダレナ像前で滑ったらっタイムスリップするって。
柚音 だからそれだよ。
葵 おかしな言動もつじつまが合う。
萌黄 ああ、そうだ、訳の分からんじゃんけんも、相当古いギャグも、あったり前田のクラッカーとか、なんかきいたことあります。
葵 むむむむ、まだ汽車が大口に走っていたころの明光生がタイムスリップしてきた!?
柚音 しかもツエちゃんも偶然、報徳学園クリスマス会に一粒会で参加するために学校に向かっていた。
萌黄 昭和27年生まれで中一ってことは昭和40年の!創立以来って本当だったんだ。あ、でもこれからツエちゃん、どうすんです?
葵 そうそう、ツエちゃん・・・・、なんとか元の時代へ、
萌黄 どうやって。
柚音 んん、ええと、マダレナ像前で滑ったんでしょ。同じ設定にすれば、帰れるかもしれない。
葵 うまくいく・・かなあ。
ツエ あの、調理が。
萌黄 いや、それどころじゃないし。
ツエ、調理室を指差して、
ツエ あれじゃあ、お昼に間に合いません。
葵 あ、坂口、園田、きんちゃん、しのちゃん、あああ、寮生のマイペースおっとり四天王じゃん。なんでこんなメンバーが固まっ・・
ツエ せっかくご招待したのに、お昼を待たせては台無しです。
柚音 ツエちゃ・・
萌黄 もう、自分の立場分かってないなあ。あのねえ、ここは2025年なの!
ツエ、割烹着を着ながら萌黄に、
ツエ シチューとサラダですね。キャベツの千切りやりま~す。
そのままそっと柚音のところへ行って、
ツエ 先輩、ほかの指示を。
柚音 いやあ、私の言うことなんか。ゲームの司会は決まってたからやっただけ。
ツエ 先輩にしかできません。お願いします。私もできることをやります。
キャベツを切る効果音トカカカ・・・
萌黄 すご~い、早っ、細っ、よし、私も。
葵 おおっ、昭和40年代の中1は、すごいな。
柚音 (決心して)ええと、坂口さんとしのちゃん?はお肉を切ってもらおうかな。うん、ちょうどいい大きさだよ。うまいよ。あ、園田さん、ジャガイモと人参のの皮むきは、葵先輩がすごくうまいから、
葵 いっやあ、そんな。
柚音 任せて、のんちゃん?と一緒にお鍋を洗ってもらうかな。そうそう、その大きいやつ。
萌黄ちゃん、あ、玉ねぎの三日月うまい。こっちの包丁が切れるよ。換えてあげよう。
音楽おおきくなる。
パワポ11 マダレナ像前。
みんな (手を振って)、また、来年ね~!!
萌黄 はあ、良かった良かった。報徳学園のみんなみんな喜んで帰ったね。
葵 そうそう、お昼も間に合って、時間通りプレゼントも渡せたね。
萌黄 ツエちゃんのお陰だよ。チョー手際いいし。女子力すごいって感じ。
ツエ じょしりょく?
柚音 女の子らしい、家庭的ってことだよ。いろいろ意見もあるけどね。
葵 ツエちゃんと、それと柚音のお陰・・・柚音のこと、誤解してたかも。
柚音 え?
葵 いや・・・・。あ、雪、こっちの影、ここだけ残ってるし融けかかって滑りやすいし。今がチャンスかも。
萌黄 えっとね、御書さん、あそこの雪の上で滑って転んでみてください。あ、今度一粒会で演劇をするんでへへへ。
ツエ はい、ありがとうございました。私も役に立ちがなって、嬉しいでした。先輩方のお陰です。
萌黄 そんなことはいいから、早く!
ツエ ありがとうございます。忘れません。では、
ツエ、雪の方に行く。
葵 何となく分かってたんだ。私たちの会話で。
萌黄 じゃあなんであんなに落ち着いて。
柚音 ちょっと待って!!
柚音、ツエに近づいて二人だけで聞こえるように、
柚音 御書ツエさん。あの、ありがとう・・・、
ツエ いえいえ、あなたは、賢い人じゃ、それに優しか。天使んごと心をしちょいやっ。
柚音 いいや!私は何でもはっきり言ってしまうから、皆に嫌われています。私のことは誰も。
ツエ でもさっきは。みんなたよりにしてたじゃないですか。
柚音 あ・・・
ツエ あの二人もあなたのことを好いていますよ。よか人達ですよ。ああ見えて、中身は、よかひとですよ。
柚音 あ、
柚音、さっきの言葉を思い出し、葵を振り返る。
葵 柚音え、早くしないと帰れなくなるよ。雪がほら融けちゃうよ。
柚音 ま、また会えますか?
ツエ もちろんですが。つるっ、ひゃあ!
ツエ、消える。
萌黄 あ、消えた。おおっよかったよかったあ!大成功!!柚音先輩、何話してたんですか。
葵 元の世界に帰れたかなあ。
萌黄 でも、タイムスリップ伝説が現実にあったんだ。まだ信じられません。なんでかなあ。なんで今・・・ん?
3人とも空を見上げる。
柚音 あ、
葵 雪だ。
柚音 クリスマスだから、かな。
萌黄 はい?
葵 クリスマスの奇跡、だね、
柚音 かもね。天使が舞い降りて・・・それで・・・
二人、顔を見合わせて笑う。つられて萌黄も笑う。
萌黄 あ、うちの車、迎えが来ました。
柚音 じゃあ、今日はお疲れ。
萌黄 お疲れ様でした。あ、あの、柚音先輩、さっきはすみませんでした。
柚音 さっき?
萌黄 お兄ちゃんのことをいい気味だとか。お兄ちゃんの気持ちも、コロナの影響を受けた人のことも考えなしでした。ありがとうございました。
葵 私もごめん、柚音の言う通りだって思ったけど、なんか反発しちゃうんだよね。私ってまだ子供だな。ちゃんと言える柚音のこと、見習いたいって思うけど、だめだな。でも頑張るよ。あ、寮のお風呂の時間が。柚音は?おばあちゃん、ソエ子さんもうすぐ来る?
柚音 う、うん、え、ソエ子さんってばあちゃんの名前、憶えてくれてたんだ・・・
萌黄 ソエ子、ツエ子、いや、子はなかったか。でも似てるね。
柚音 ばあちゃんの実家も羽月の御書だったかも。御書は羽月に多いからな。
葵 あ、しかもおばあちゃん、ソエ子さん、明光卒って言ってなかったけ、じゃあ知り合いなんじゃない。ツエちゃん昭和27年生まれだったよねえ?
萌黄 確かでした。西暦に直すには1925を足せばいいし。
柚音 おおっ、物知りイ1952年
葵 2025から引いて73歳
柚音 あ、たぶん一緒ぐらいか一個違い。
葵 じゃあ、絶対知ってる。
萌黄 幼馴染か、いとことかはとことか。名前も似てるし。
柚音 う、うん、聞いてみる。あ、待ってらっしゃるね。
萌黄 あ、すみません。お疲れさまでしたあ。
萌黄退場。
葵 お疲れさまでした。あ、お風呂がやばい、じゃあまた明日!
葵退場。
柚音 お疲れ!!
車の音がして、ばあちゃんが登場。
ばあちゃん ごめんなあ、おそなってしもた。
柚音 あ、いや。
柚音、ばあちゃんの顔を見ている。
ばあちゃん、車から降りてくる。
ばあちゃん クリスマス会な、いけんじゃったな。
柚音 よかったよ。
ばあちゃん そは、よかったが
柚音 ばあちゃんのころからこれはあったの?創立以来っち聞いたから。
ばあちゃん これっつは?
柚音 報徳学園招待クリスマス会。
ばあちゃん ああ、あったよ。孤児院の子どもたっを明光に呼んで、聖歌をうとたりご飯を出したり、あたしも、いたっちょったが。
柚音 知らないかな、御書、ツエさん
ばあちゃん はいっ!、
柚音 はあ?
ばあちゃん 今あたしの名前を呼んだがな。
柚音 いいいやあ、ばあちゃんはソエ子じゃがね。
ばあちゃん 本当はツエじゃっと。生まれたときにソエっち名前を付けたつもりがあたしのじいちゃんが間違ってツエっち役場に届けたもんじゃからツエになったとよ。じゃどん、わがいぇや近所ん衆はソエさんソエ子さんっち呼びゃっからどっちでんよかとよ。ソエでんツエでん。
柚音 !!あ、あ、あ、あじゃあさあ、中一んとき、なんか違ったところにいったとか、なんか変な、違った、ない?
ばあちゃん あああ、イギリスの女学生がおったけ。ハイカラな制服で。ああ、明光の、あんたが着ちょる、そいじゃなくて、今ん、新しかほうのような、そん人たちと料理をしたが。
柚音 そ、そ、、それが、それが今日よ。その、タイムスリップしたのよ、2025年に、今日、今、来ちょったのよ!!!。
ばあちゃん なんちな。イギリス人がな。
柚音 あああ、んんんんん
ばあちゃん ああ、そんときになあ、明光の生徒で賢くてやさしか、よか生徒がおいやった、天使んごと心のきれいか生徒じゃったあ・・・。(ぼーっと遠くを見る)
柚音 ばあちゃん・・・ツ、ツエちゃん・・・(泣きそうになりながら、首を振る)いや、天使は、天使は、(おばあちゃんを見て)う、う、ツエちゃんの方だったよ。う、(はっきりと大きい声で)クリスマスだから、神様が、天使を、天使が・・・
柚音、ばあちゃんににじり寄っていく。
ばあちゃん じゃったど、天使じゃった・・・・。柚、あんたも、あの子んごとあればよかのにねえ。さんか、帰っど。
ばあちゃん、車の方へ。
柚音 え?だからばあちゃん
柚音、自分を指差してアピールする。
ばあちゃん あんたは、がっつ、きびしかああ、優しくしてください。はよ乗らんね。さんかが。
柚音 あのねえ。えと、ばあちゃん、あのねえ、はあ、まあいっかあ。
柚音、しばらくして
柚音 ちょっと、ばあちゃん、ツエ子・・さん・・
と言いながら、おばあちゃんを追いかけて柚音退場。
エンディング。
幕