『あたしの目標』

脚本 山之氏 海帆
2022年11月30日

【登場人物】

るみ…小5

あやね…小5

センパイ…中1

日直

クラスメイト1

クラスメイト2

クラスメイト3

出発係


0、るみとセンパイ

るみは、友達とケンカ中……
るみは、習い事が上手くいかなくて悩み中……
るみは、ペットがなくなって……
るみは、好きな人にふられて……

るみ            そんなとき、センパイははげましてくれたの。やさしかったの。何回だって相談にのるって……挨拶を毎日してくれて、笑顔で話してくれて……あたしは……


1、教室

日直が号令をかける。

日直            先生! さよーならー。皆さんさよーなら。

みんな        ロックシザーペパー ワンツッスリー

声                イエイ!

声(同時)        うー負けた……。

声(同時)        よしっこれで12ショ〜ウ。

解散するクラスメイト達。

クラスメイト1              るみ〜。せっかく運動会終わったんだしまる公であそボーよ!……ってもういないし!

クラスメイト2              今日も、るみは練習じゃない? だよね! 夏休みからずっとだね。

クラスメイト3              アッ! あいつ好きな人のために練習してる〜とか言ってなかった?

クラスメイト1              そうそう……。でもいちずでいいよねぇ……。

クラスメイト2              まあがんばれるみ! 応えんしてるわぁ〜

クラスメイト3              さっ帰りますか。


2、ゴゴGo! あたし

ゴールするセンパイとるみ。

センパイ    ふう〜……1回目終了!!

るみ            いやあセンパイと走ると毎回新記録ですよー! うれしい! もう最高にハッピーです♪

センパイ    うれしいなぁ……。目標の1位とれるといいね!

るみ            はいっ! 先輩にいい結果見せたーい!

センパイ    ありがとー。ちょっと私トイレ行ってくるね! しつれい!

るみ            分かりました! 私もう一回走って来ますねー!

るみ、走る。

るみ            たくさん走って一位になってセンパイに見てもらって……もうそうがふくらみますな〜。もう一回走っちゃお! ん? 何かたおれこんでな……だっ大丈夫!? おーい!

転んでいたのはあやね。背中をたたくと起き上がり走り出す。

あやね        ありがとう。そんじゃ!

るみ            いやマジかよ! 鼻からもひざからも血が……。

あやね        全然平気だから!

るみ            絶対あぶない! とまった方がいいよ!

あやね        とまってほしけりゃついてくれば?

るみ            走ればいいの? それならよゆーだね! あたしは夏から走ってるの! すぐおいつくよ!

あやね        おいつけるかな? あのベンチがゴールね!

るみ、走る。

あやね        どうしたの? もうつかれたの?

るみ            あたしがつかれる!? ちがいます!! まあゴールするころにはもうあたしが勝って……。

あやね        ゴール! わたしの勝ちだね。

るみ            ハァ〜? ヨユウ勝ちされた……。

そこにセンパイ登場。

センパイ    すごくいい走りね! こっから見てて二人ともとても速かったよ〜!

2人            ありがとうございます!

センパイ    ん……って! 血だらけじゃない! そんなので走ったなんて……もう! 手当てするからきてごらん あやね!

あやね        あっはい……。

センパイに手当てされるあやね。最初はケンカ気味な二人だったが、どんどん楽しく話すようになっていった。

センパイ    るみには聞いたけど、あやねも持久走大会の練習?

あやね        はい。学校の五年女子の持久走で一ヶ月後、試走でその二週間後、本番です。

センパイ    あー! 確か私が小六の時もそうだったわ!

あやね        ん? そういやセンパイ中一だから陸上部入ったんじゃないですか?

センパイ    あ……いや考えたんだけどね。ちょっと色々事情があって、今はここでるみと。

あやね        まあ事情は誰でもあるし、大丈夫ですよ!

センパイ    あやねー! うちの後輩達はなんてかわいいんだ!

二人が話すのをちょっと遠目から見るるみ。

るみ            どゆこと!? センパイとなれなれしくしやがって!? こやつ……。(センパイに)ね、ねえセンパイ……この人と知り合いとかじゃないですよね。

センパイ    ああ知り合いだよ。

るみ            マジじゃないですよね……。

センパイ    マジマジだよ〜

るみ            ガーーーーーーーーーーーーーン……。

あやね        わたし、センパイと走りたくてさがしてたんですよ!!

センパイ    そうなの!? この公演でだけど、じゃあ今日からよろしく! ハイタッチ!

あやね        ハイッ! よろしくお願いします。


3、ノノNo! ぼかすやつ

3人が練習をしている。

るみ            いっしょに……いやあたしとセンパイが!

あやね        体操するならわたしとセンパイが!

センパイ    とりあい! 私のこと好きすぎないかぁ……。とりあえず3人でするからね。

2人            チッ。

走り出す3人。

るみ(モノローグ)      フォーム、こやつとってもきれい…ん。タイムも、うげえ! 差が……。

あやね(M)                  まだまだだけど練習についてきてる……。

るみ(M)                      呼吸? そうだ呼吸法だ! 今までがむしゃらすぎたかな……?

あやね(M)                  呼吸法ならわたしの走りやすいもの教えようかな……。(るみに)るみ……わたしの走れやすいものなんだけど……

ゴール。

るみ            タッタイムがちょっとあがった!

あやね        さっさがってないけど、るみがあがってきてるぅ。

センパイ    2人に負けらんないね!

3人は何日も練習していた。ある日、

センパイ    じゃあダウンしててね! ごめん先帰るおつかれさま!!

2人            おつかれさまでーす!

るみ            じゃあダウン!

2人、ダウンでゆっくり走りながら、

るみ            ね、ねえ質問してもいい?

あやね        わたしもなんだけど。

2人(同時)    どうして練習を始めたの?

るみ            じゃ、じゃああたしからで、

あやね        どうぞ。

るみ            あっ、あたしはセンパイのためにがんばっているんだよ……。

あやね        わたしは……違うね。自分に目標があるから。……というか、センパイのためって何がためになるのよ……?

るみ            あたし、知ってるの。センパイが陸上部にいきたいって。でも何か理由があっていけないのも知ってるの。あたしはセンパイに昔も今も何度もはげまされたから今度はあたしが……。あたしの目標は1位になってセンパイをはげますってなったかな……。

あやね        ……。

るみ            ……。

あやね        好きなの?

るみ            すっすきって誰のことよ!

あやね        せ・ン・パ・イ!

るみ            すっ、すきじゃないしー!

あやね        で、ホントのとこは〜?

るみ            にやにやするな!! でっでも! せんげんする! あたしが持久走で1位になる!

あやね        理由も聞いてだけど、るみには難しいね。わたしが一位になる。

るみ            どうしてそんなこと言えるの? 最後までわからないじゃん!

あやね        わかるんだよ。自分のために進む私との差がね。

るみ            あやねとあたしの差はタイムだけだし。好きな人のためにがんばりたいの!

あやね        きっといつかわかるよ……。

るみ            あやねが何といおうとあたしはやってみせるの!

るみの練習日誌帳17ページ目 10月17日。

るみ            少し仲が縮まるかな……と思って質問したのに! どうしよう……センパイのことをノノNO! ぼかすやつがしゃべりませんように! これフラグじゃないよね……。試走まであと1ヶ月……。

るみ            少し仲が縮まるかな……と思って質問したのに! どうしよう……センパイのことをノノNO! ぼかすやつがしゃべりませんように! これフラグじゃないよね……。試走まであと1ヶ月……。

10月18日。はれ。

センパイ    じゃあこれからダウンします。

2人(同時)    どうぞとなりに! あァァ!?

センパイ    じゃあまん中いくね。

タッタッタッタッ

センパイ    2人は私がいない時に何か話した!?

るみ            まったく話しませんでした!

あやね        めっちゃ話しました!

センパイ    2人で意見が違う……。

あやね        とても面白いことがあったんですけど……いや、ひみつですね。

るみ            にやにやするなあ!

センパイ    めっちゃ気になるぅ……。それもだけど2人とも始めた日よりタイムが速くなったね。ホントうれしいよ。

るみ            そうだといいです。うれしい……でもあたしまだ速くなりますから!

あやね        わたしはるみをこし続けます。

センパイ    二人ともなんで筋肉ボーズで言うんだよwww。


5、試走

るみとあやね、同時にゴールする。

るみ            はぁはぁはぁ……あたしぃ……やったよセンパイ! いちいだあーーーーー!

あやね        はぁはぁわたしも速くなっているのについて来れるなんて。

2人            ふっ……面白い。


6、

練習場にやってくるるみ。

るみ            今日は練習なしか…ん。でもセンパイに伝えたい……。あっセンパイ!!(モノローグ)センパイだっ!! きっとこんなに伝えたいのはあたし、センパイが、

センパイ    あっ、るみ。

るみ            センパイ! あたし試走で一位とったんです! センパイのおかげです! うれしくて! もうホントいいたくて!

センパイ    えっ……。るみすごいじゃん! るみ……

るみ            セッ、センパイ! ボロボロなみだが……。

センパイ    後輩ががんばってきてくれたのに私ががんばらないわけないよね……。私も伝える! 私、勇気もらった……。うれしかった! 私やってみたい! 私陸上部行きたい! 私勇気だして好きな人といっしょに走りたい!

るみ            それはよかっ……え?

センパイ    はずかしいけど私が陸上部に行けなかったのは好きな人と昔こじれちゃってさ……でもるみたちみてたらなんで悩んでたんだろうって……ホントよかった。ありがとう!

るみ            はい……。あっ時間! もう今日は帰りますね。

センパイ    じゃあね!

遠くからセンパイの声が聞こえる。

センパイ    るみー! いっしょにがんばろうね! ホントありがとう! 大好き!

るみ            センパイ。行かないでなんて言えないよ。あたしの目標がかなったのに大好きなんてうそじゃん。センパイのバカ。


7、3人の練習がおわる

るみ            さぁ今日も練習だあ!!

あやね        今日はいちだんと明るいわね。それに元気……。

るみ            まぁねぇ。あ! でねぇ、センパイはもう練習できないんだって。

あやね        へぇ……ってそれって。

るみ            あはは。

ダウンが始まる。

あやね        ねぇるみ。さっきの言葉とりけす。今日、元気ないでしょ。

るみ            ええ? あたし今日ちょー元気だよ!

あやね        そうはみえない。走りのペースがみだれてる。

るみ            みっみだれてない!

あやね        休めば? その分わたしは走るけど。

るみ            あたしは走る! ほらあたしちょー明るいの!

あやねの練習日誌ノート。11月23日。

あやね        るみとわたしは同率1位。昨日は最高の笑顔だったのに、今日はなんだかつくってる笑顔。声をかけたのにそっけない。走りのみだれもある。きっとそうなった理由は………だろうな。


8、分からない

朝練習をしているるみ。

るみ            はぁはぁ。

るみ、立ち止まる。

るみ            あたしかっこいいじゃん。好きな人はげましちゃってさ。形はちがえどよかったよかった。センパイがいなくなってから5日走った。6日走った。7日走った……。あたしセンパイのためにがんばってたんだよ。走る理由だったよ。もう何も……。あれそういえばあたしの目標ってなんだっけ?。

9、持久走大会

スタート位置につくるみ。

るみ            もう当日なんだ……。これで走れるのかな。

るみ、不安がつのる。

出発係        いちについて、よーい、ドンッ!

ドドドドドドドドド

るみ            まえがみえな……アッ!

転んでしまうるみ。鼻からもひざからも血が流れていた。

るみ            あぁぁぁ、いっ痛い……。こんな気持ちで走ったからかなあ。ははっ、もうむりなんじゃ……。

パン! 突然背中を叩かれるるみ。

10、あたしとあなた

るみ            いっいたあ、あっ、あやね!?

あやね        わたしがかつ!

るみを抜き去っていくあやね。

るみ            なっなぁ、あたし、あたしかちたい!

走り出するみ。

るみ(モノローグ)      あたしは無意識に走っていた。だってあたしは知っていたから。ここで転んで立ち上がったやつを知ってるから……あたし勝つから!

るみ、あやねのあとを追って走っていく。


11、目標

大会が終わったところ。並んでいる二人。

あやね        一位になれなかったぁぁ。るみぃ。(鼻をすする)

るみ            (鼻をすすり)ありがとう。あたし、あの時勝ちたいと思った。あたしたちがめざしてたものとちがったけどホントよかった。……あんね、あやね。もう一度戦おう。あたし目標ができたよ。

あやね        うん!

るみ            目っ、めっちゃはれてる……。

あやね        体があついよ……。

るみ(同時)    あたしが、

あやね(同時)              わたしが、

2人(同時)    勝つ!

おしまい