アシテジ南アフリカ観劇日誌1 2017/05/18 「衝撃の『AnimalFarm』」

南アフリカに来ています。
アシテジ世界大会で「AnimalFarm(南アフリカ)」を観ました。素晴らしい演劇でした。いま自分が気になっている事を自分が出来るよりも遙かに高いレベルで実現されていました。例えば・・・

○役者は客席を向いて立つべきか、相手役に向いて立つべきか。織り交ぜるならその線引きはどこにあるのか、演者のセリフは結局誰に向けられているか、という問題。
○歌は上手いにこした事はないが、上手いだけの歌では感動しない。大切なのは、「そのキャラクターがなぜ歌っているか」という事。でも本当にすごい歌は、「人はなぜ歌うのか」を感じさせること。
○音響で大切なのは、舞台からの出力レベルを事細かに設定する事ではなく、観客の入力レベル(劇の進行に合わせた耳の感度)を設計することだと思っていたが、もっと大切な事があった。それは、きっかけはすべて「演者」が握っている事。演者こそ芝居の進行者。その事を肝に銘じておかなくては震えるような作品はとうてい作れない。
○照明もしかり。本当にいい芝居の「きっかけ」って全部ものすごく簡単なんじゃないだろうか。でもその簡単な「きっかけ」をオペレーターは極度の緊張の中でボタンを押すんだろう。

「AnimalFarm」の登場人物は豚や馬。スターリンと思われるような、独裁者の豚が出て来ます。でも言葉が分からないので、ストーリーはほとんど追えません。地元の高校生達は、ドッカンドッカン笑いながら観ているのですが、僕はなんで笑っているのかほとんど分かりません。それでも90分間舞台に釘付けでした。1000人近く収容できるであろう立派なホールの舞台の上に立っているのは、たった5人の俳優達です。スモークや影絵などの演出はありますが、大がかりな舞台転換はありません。俳優達は、柵と木箱と土嚢袋をいろんなものに見立てて、すべての場面を作ります。歌い、踊り、語り、豚も馬も人間もひつじも軽やかに演じ分けます。宣材写真からも分かるように、5人の俳優は若者です。この写真に騙されてはいけません。凄まじい俳優たちです。作品の説明欄には、「ジョージ・オーウェルの原作が出版されてから70年経つが、荘園農場の苦境と住民である動物たちの有り様は、現在の南アフリカにも通じる物がある。」とありましたが、言葉の分からない僕には、要所要所で歌われる♪Africa♪という歌の真意は分かりません。ただ、この5人の俳優が、いま、なぜ、ここに立って芝居をしているのか、その確信を持っている事は分かりました。そしてその確信は言葉ではなくエネルギーとして届いてきました。
自分の芝居から言葉の意味を引き算して、こんなにエネルギーが残るだろうか…なんか悔しいので、明日また観ます。

今日観た芝居
「Animal Farm(南アフリカ)」90分。英語。16歳以上。


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